帰宅すると家族の夕食づくりをすませ、学習の為に睡眠を削り、一年で三年分生きた心地です。忙しいという言葉は、時間の使い方が下手だというようで使いたくありませんが、昨年から今年にかけて、本当に忙しすぎて心を失い、一つに集中しなかったことが、今回の舞台の大きな反省点です。
受験勉強というのは、もう一度大学において国文学を専攻し、源氏物語を学問と芸術の両面から極めたいと思ったからです。『 読書百編、義、自ら見る』という諺がありますが、舞台実現までに5年の歳月が流れ、その間、同じ箇所を何度も声に出して読んでいますと、難しい古語がある日突然、その意味を身体で感じることが幾度もありました。これは朗読の面白味の極みで、言葉から体感したことを、学術的に裏付けたいと思うようになってきました。
それならば、一年でも早いほうが良いと思い、平安文学は当然京都の地において学ぼうと決めました。高校時代、国文学は、かび臭いようなイメージをもち進路からはずした経緯があるので、人生解らないものです。10年前、湖東町に開局したCATVに再びアナウンサーとして勤務し、その繋がりで今回の舞台を企画・運営することができましたので、職場をはなれることは、大変寂しいことですが、これまでの積み重ねや反省を生かして、語りの道に専念したいと思います。
新人アナウンサー時代から、24年間御指導頂いている元NHK飛田薫アナウンサーは、『 100回の練習より一回の舞台』と励ましを頂き、母校の元校長は、高校・大学で国文学の教鞭をとられた方で、男の自分が出来なかった源氏の語りを続けるようにと、嬉しいお手紙を頂きました。これからの課題は、源氏の語りは、京の都で生まれたものであることを念頭において、発音をどの時代までさかのぼるかということです。
平安式アクセントは、金田一春彦先生が、女優の関弘子さんに再現させた、すばらしい音声表現がありますが、面白いのですが難解です。東京アクセントの古語の朗読CDが、何人かの方により出ていますが、関西人には、鎌倉幕府以降の武家社会の物語に聞こえてしまいます。京ことばの源氏物語は、雰囲気がよく解りやすい現代語訳ですが、原文の格調高さには劣ります。言葉の表現は、奥深く面白い課題です。
この秋には、朗読教室の小さな会を開きますが、『夕顔の巻』を、大西一叡先生の一弦琴のお力添えを頂き、地の語りは共通アクセントで、セリフの部分は関西アクセントで語ります。夕顔の、ものの哀れが表現出来るよう、30代から80才の10人が、場面ごとにわけて練習中です。日本が世界に誇る、最古の長編物語『 源氏物語』54帖を原典を十二分に理解を深め、朗読表現出来るようになるためには、長い道程となりますが、生涯かけての目標に出会えたことは幸福なことです。湖東町ゆかりの第1次南極越冬隊長 西堀栄三郎の『行動し続ければ、必ず夢は、現実となる』という語録を実感した一年でした。これからも、次の夢に向かって健康に留意し歩み続けたいと思います。檜の会の大先輩の皆様には、今後も多方面において、ご指導を賜りたく宜しくお願い申しあげます。取り留めのない文で、お許し下さい。
湖東コニュニティネットワーク アナウンサー YMCA朗読教室講師 今井友子 |